
第一章 限界集落
作:NYO
下手袖より武志登場、スマホをいじくりながら反対の手でラジカセを持っている。武志、ラジカセでCDをかけるとお神楽の録音がかかる。すると、スサノオの面をして農協のジャンパーを着た惣吉と、白い布で顔を覆い左右の腕に八岐大蛇の首の作り物を嵌めた俊坊が出てくる。二人、お神楽に合わせて舞い、オロチ退治の伝説を演ずる。スサノオ、完膚なきまでに負ける。
惣吉「やめやめやめ、何やっちょーかや、俊。オロチがスサノオに勝ってどげするかね」
俊坊 「お前がいつまで経ってもかかって来らんけん、こっちからいってやったわね」
惣吉「何がお前だ、兄貴に向かって!」
惣吉と俊坊、喧嘩を始める。武志、まったく興味なさげにスマホをいじり続ける。
下手袖より耕一が登場。
耕一「お前ら、表でなにやっちょーかね。武志、音とめーだわね」
惣吉「こいつ、少しも動き頭に入っとらんけん、片付けの間に少し練習しとったわね」
俊坊「お前の動きが煮え切らんけん、いつ動いていいか分からんのだわね」
惣吉と俊坊、また喧嘩を始める。
下手袖より優一が登場。
優一「おう、乗ってくかね?」
全員、車に模した席に着く。ドライバー席…優一、助手席…惣吉、後部座席左…俊坊、中央…武志、右…耕一。惣吉と俊坊は相変わらず喧嘩しており、ミラーが見えずに後方を振り返った優一が巻き込まれる。武志、無関心にスマホをいじり、耕一は窓の外をじっと見ている。
惣吉「大体、お前は蜂部神楽の心がわかっとらんわ」
俊坊「じゃ、お前はわかっとるかね?」
惣吉「昔、俺らの村は斐伊川の氾濫に悩まされ続けとった。な…それがオロチだわね、ヤマタの」
惣吉「そげだ」
俊坊「バラバラになった首は、水の神オロロンになり、今もこの村に住んどる」
惣吉「そげだ」
俊坊「今でもオロロンが見守ってくれるけん、俺らは村に住めるわね。知っちょーわ!」
惣吉「知っちょるなぁ」
武志「もう居らんけどね」
全員、武志に「しっ!」と言って口に人差し指を立て、発言を遮る。
武志「…」
優一「やめ…武志」
耕一「心臓に悪いがね」
武志「すんません…」
優一「普段から注意せんと、ついポロッと出るけんな」
武志「あの…優一さん」
優一「何かね?」
武志「ちょんぼしポプラに寄ってもらってえーですか?」
耕一「お前、また携帯止められちょーかや?」
武志「違います、ポイントが足らんくなって」
耕一「ポイント?なぁにがポイントかいね、インポみてぇな顔して、こいつは」
俊坊「どーせ出会い系だろうが。やめちょけやめちょけ、こげな時代にこげな田舎に来てごす女はおらんわね」
武志 「そーがですね…来月の村芝居見に来てごすって」
優一、急ブレーキを踏む。全員、つんのめる。武志を振り返り沈黙。
惣吉「そら武志、その女は嫁に来てごすって事かね?」
武志「いやぁ、まだそこまで決まっとらんけども、まあお互い本気だけん、そげん事なるかもしれん」
優一「お前、やるがね」
車を発進させる優一。
俊坊「早く子供でも産んでもらわんと」
武志「俺らも絶滅させられてしまうがな、農協に」
優一「武志!」
武志「…すんません」
耕一「でも、武志の言う通りかもしれんな。…見てみーだわ、耕作放棄地ばっかだけん…田んぼひび割れて…ジジババだけ増えてしまって…」
惣吉「子供がおらん…その前に嫁がおらん…若いモンは出て行く」
優一「ジジババ増えるだけならまだいいわね…」
俊坊「減って来ちょーわ、人が」
耕一「廃墟…廃墟……廃墟、廃墟(窓の外を眺めながら)」
優一「ん…?」
耕一「いや、増えたなーと思ったわね、廃墟」
武志「住人がおらんけんね」
惣吉「なーに、今に俺らも居らんくなるわね」
全員、笑う。優一、また急ブレーキ。
全員「わあっ!!」
全員、つんのめる。
惣吉「お、おべたー」
耕一「どげした、優ちゃん?」
優一「(後ろを振り向いて)あ、あすこに、お、女がおるわ…!!」
惣吉・俊坊・武志・耕一「ええっ!」
武志「なに、寝ぼけちょるかいね…」
優一「なんか店もあったわ、用水路のとこ」
惣吉「こげなとこに店なんかあるワケ無いがね」
優一「イヤイヤイヤ!あったけんね!」
耕一「ホントかいね?」
惣吉「じゃ、一回、戻ってごすだわ」
耕一「じゃ、行くけん。優ちゃん、どの辺かいね?」
優一「アレかなあ。一瞬だったけんなあ」
全員、タイミングを合わせてキッと車が止まる演技。全員で一点を見つめ。
全員「NPO法人『オロロンの家』?


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