2025-01

手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.16 – 宮田涼介

そんな中、中学二年の二学期の初め頃だったか、あの吉井が初体験を済ませたという情報を察知した。相手は吹奏楽部に所属する同級生で、この二人が交際しているという話は聞いたことがあったが、ちゃっかりこの夏休みの間に二人して大人の階段を登っていたとい...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.15 – 宮田涼介

二〇二四年二月一八日 神奈川県逗子市桜山八丁目にて 安原涼太 記 まず初めに断っておくが、恐らく俺は近いうちに殺される。相手は多分、通りすがりの中年親父だ。しかし今更、怯えて生命保険に入るようなことはしない。受取人も居ないのに生命保険など入...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.14 – 宮田涼介

「漸くサラリーマンらしくなってきたよ」復帰してから一年ほど過ぎた頃だったか。調子の良いことを言いながら帰宅し、私の手料理を口にする涼太。時刻は午前〇時を回ろうとしている頃合いだった。決算業務の多くを再び任せてもらい、上司からの評価も得られて...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.13 – 宮田涼介

そうして、涼太の療養生活はここ逗子にて幕を開けることとなった。私という同居人が居ることで幾分気は紛れたらしいが、その体調にはかなり浮き沈みのある様子だった。酷い時は布団から起き上がることさえ儘ならないようだった。私の拵えた手料理も食べる気が...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.12 – 宮田涼介

「実は今、会社を休職している。傷病手当金だけで一人暮らしは厳しくて、実家にも帰れなくて困っていたんだ」「実家に帰れないって、練馬の実家はどうなったんだ?」「まだあるけど、実家との関係が悪いから帰れない。休職していることも父親には言っていない...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.11 – 宮田涼介

Z高校を卒業した私と安原は共に、Z大学法学部法律学科へ進学した。いつまでこの腐れ縁が続くのかと思ったものの、クラスがかけ離れていた為、涼太の大学生活は風の噂程度にしか聞いていない。Z高校在学時から司法試験に受かって弁護士になると意気込んでい...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.10 – 宮田涼介

私は横浜サラリーマン殺害事件の裁判を何度か傍聴した。ネット上での様々な憶測も相まって、一般人が犠牲となった事件にしては傍聴者が多く、その多くが涼太と同年代と思しき男性である。私は傍聴席の最後列で身を潜めるように座っていた。前方の関係者席には...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.9 – 宮田涼介

私は不意に、中学の時に読んだ保健の教科書を思い出す。性行為についての記載だった。「子孫を残すための行為が苦痛を伴うものなら、その生物は滅びる。だから、神はその行為に快楽を与えた」と。私はつくづく思う。この世に「神性なる領域」というものが存在...
手弱男と作法(宮田涼介)

手弱男(たおやお)と作法 vol.8 – 宮田涼介

文化祭当日、友人の居ない私はひとまず出欠確認の頃合いに校舎へ赴き、一頻(ひとしき)りこの動物園を見て回ることにした。銀杏並木の其処彼処で肉食獣共が女子高生と会話し、連絡先を交換している。校舎内では、喫茶店などを出店する運動部の連中が、ホスト...